iBookstoreの登場により書籍アプリの審査が厳しくなったApp Storeで漫画アプリを出す為にやった事!
既にご存知の方も多いと思いますが、現在、App Storeでは書籍関係のアプリが審査に通りにくくなっています。というのは、日本や世界のあちこちの国でiBookstoreが本格的に始動し、アプリである必要のない書籍系のものはApp Storeではなく、iBookstoreで出さなければいけなくなってしまったからです。当然といえば当然の結果なのですが、実際作る側からしてみれば、アプリの代わりにiBooksで作ればいいというほど単純な話ではありません。そもそもiBooksは今のところはまだアプリほど自由度の高い書籍が作れるわけではないので、本当にシンプルな書籍か、せいぜい音や映像を挿入、簡単なアニメーションを組み込むくらいが関の山です。
しかし、そういう作れるものの違いよりも、一番大きな問題はiBooksには「広告」が入れられないという事だと思います。無料で本を提供する代わりに広告を入れて収益を得るというビジネスモデルが存在しないという事です。これはユーザーにとっても、無料で読める本が少なくなるため、影響は大きいと思います。本を出す側も何らかの形で収益が得られなければ無料で本を提供する事は不可能ですから。つまりiBookstoreがはじまった事で、無料で読める書籍が激減する事は間違いないと言えます。
App Storeではこれまでに無名でありながらも無料漫画が大ヒットに繋がった作品もあり、新しい才能が発掘される場としても大きな可能性を秘めていたと思います。しかしiBooksの場合だと、完全に無料で書籍を出して、仮にもそれがヒットしたとしても、収益に繋げる事が容易ではない為、続けて作品を生み続けていく事が難しくなります。(そもそも現状では圧倒的にユーザー数が少ないため、無料でもダウンロード数はそこまで見込めません。iBookstoreでの書籍のダウンロード数についてはこちらの記事をご覧ください:「個人電子出版をはじめて2ヶ月!これまでの収益と無料書籍のDL数を公開!」)
iBookstoreはあくまでも既に知名度のある作家や作品が電子書籍を販売していくストアとしては上手く機能していますが、App Storeのように無名開発者でも大ヒットを生み出せるような環境ではありません。そういう意味でも、無名の作家として書籍を出すならiBookstoreよりもApp Storeで出した方が可能性はあったのです。
にもかかわらず、アップルはApp Storeでのブックアプリの審査を厳しくしてしまい、多くの書籍がApp Storeで配信できなくなってしまいました。
【どうすればApp Storeで書籍アプリを出す事が出来るのか?】
まず、普通の書籍だけではもうほぼ100%通りません。しかし、完全に不可能という事でもないのです。書籍+アルファの何かを組み込んで、iBooksでは同じものが作れないという事をアピールする事ができればまだ可能性はあります。
と言っても、iBooksでも多少はインタラクティブな事が出来るので、音を出したり絵を動かしたりする程度ではiBooksで出すように言われてしまう可能性が高いでしょう。このへんは、iBookstoreの「ぴよちゃんのおはなしずかん おてがみきたよ」あたりを参考にしてみると良いと思います。無料でサンプルも読めます。
最低でもこのくらいはiBooksで出来てしまうので、これ以上のインタラクティブ制でなければApp Storeでは難しいという目安になりそうです。
【App Storeでブックアプリをリリースするまでの経緯】
僕自身、ちょうど漫画アプリをApp Storeでリリースできたところなので、それまでの経緯を書きます。リリースした漫画アプリ「ヘル・ベースボール」は一回目はやはり審査に落ちました。
一回目に提出した時点では、基本的には漫画を読むだけのアプリでしたが、ボタンに動きを付けたり効果音を入れたりはしていました。オマケとして「壁紙」をダウンロードできる機能や、アプリ内からツイートしたりFacebookに投稿したりする機能なども入れ、それなりにiBooksの書籍では出来ない事を練り込んだつもりでした。更に、iBooksの漫画は左右にしかページがめくれないため、アプリでは縦にスクロールさせてみたりと、ちょっとした小細工も加えてみました。
ただ、それだけでは所詮は書籍としてしか見てもらえず、やはりiBooksで出すようにと言われてしまったのです。
そこで、アプリの中にゲームを導入するという手段をとりました。この漫画は元々iPhoneアプリ用のゲームとして作った「ONI BASEBALL」が題材になっていたので、元からあったゲームを同じアプリの中に移植しただけの事なのですが、念のためにGameCenterのランキングにも対応させる事で、絶対にiBooksでは出来ない事をアピールしてみました。
結果、2回目の審査では無事「ブックカテゴリ」としてアプリをリリースする事ができたわけです。「ゲームカテゴリ」としてゲームを全面的に売りにして、書籍がオマケという形で出す事が一番のリスク回避ではあったと思いますが、あくまでも "書籍のオマケ" としてゲームが入っている形にこだわり、カテゴリも「ゲーム」ではなく「ブック」で出す事に挑戦してみました。
厳密にはこの審査で一度、「ゲームが見当たらない」という理由で落とされてしまったのですが、どこでゲームが遊べるかを説明したところ、次の日には審査に通してもらえました。ゲームをもう少し分かりやすくしていればすんなり通っていたのかもしれませんが、それでもとりあえず「ゲームを入れればブックカテゴリでも通る」という実証になった事は間違いないでしょう。
必ずしもゲームが入れられる書籍ばかりとは限りませんし、書籍をアプリ化する為にいちいちゲームを開発するのもコスト的には見合わないケースもあると思います。なので誰にでも通用する解決策とは言いづらいところですが、一つの有効な手段ではあるはずです。
他にもやり方次第ではブックカテゴリに潜り込む方法はありそうですが、はっきりしているのは、以前のようには簡単にApp Storeで書籍アプリを出す事は出来なくなっているということです。今後このルールとどう向き合っていくか、名の無い作家さんやブック系アプリ開発者はどうやって収益に繋げていくかが大きなテーマになるのではないでしょうか。
最後に、App Storeのブックカテゴリで通ったアプリがどんなものか興味のある方は、参考までにも是非「ヘル・ベースボール」をダウンロードしてみてください♪ 無料です☆
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