妻との出会い【その2】〜プレゼント大作戦〜
「ごめんなさい、突然だけど体調が悪くなってしまったので新潟には行けなくなりました(><)」
新潟に行くはずだったその当日にそんなメールが届いた。
まさか、直前になって行けないと言われるとは思ってもなかったのでショックだった...。
(いやいや、本当に体調が悪くなったに違いない。)
(でも昨日は相当元気だったような・・・。)
(まあ、でもウソならもっと上手くつけるよね??)
(いや、そもそも冷静に考えたら普通は来ないはず・・・。)
ポジティブに考えてみたり、ネガティブに考えてみたり、頭の中がゴチャゴチャしはじめた。
なんにしても新潟に誘うというのは現実的には早過ぎたに違いないという結論が出た。
とにかく女の子の考えている事はよく分からない。
公園に来なくなるわけでもなければ、メアドの交換も嫌がっていなかったし、嫌われてはいないのだろうけど、友達的な感じでしか見てもらっていないのかもしれない。きっとまだ何かが一つ足りていないのだ。
そんな時、小さい頃からの父の教えで、「女の子にはプレゼントをせよ!」と伝授されていた事を思い出した。
あれは確か小学校1年生の頃、クラスに気になる子がいる事を父に相談すると、引き出しからエメラルドのような宝石を出してきて「これをプレゼントすれば確実だ」と渡された。今思うとそんな高価な物ではなかったのかもしれないが、小1の子供には相当スゴそうな宝物にしか見えなかった。
確かにその宝石をプレゼントした時のその女の子の目は明らかに輝いていた印象が残っている。
そうか、すっかり忘れていた!
プレゼントをあげなければ女子のハートはつかめないのだ!
そう思った僕はさっそくプレゼント作戦にとりかかった。
ただ、宝石など買える余裕もなければ、そもそもいきなり宝石なんてプレゼントされてもドン引きされるだけだろうという常識は持っていたので、お金では買えない物がいいと思った。人のハートをつかむためには、こちらも心を込めなければ話にならないだろう。
この時、ちょうどお盆の時期で、彼女は岩手の実家に帰っていた。
その間、連絡を取る手段はメールくらいしかなかったが、メールもそんなに突拍子もなく送り合うような仲でもなかったので、なかなか無闇にこちらから書く切っ掛けが思いつかなかった。
そこで最初のプレゼントとして思いついたのが「犬の絵」だった。僕は昔から絵描きになりたかったので、特技と言えば絵くらいしかなかった。なので彼女の犬の絵を描いて写メを送ってあげればきっと喜ばれるだろうと思った。
そんな事を切っ掛けに、メールもわりと頻繁に出来るようになった。
彼女が岩手から戻ってくると、お土産があるからウチまで届けに行くとメールがきたので、住所を教えると、玄関前まで来てくれてチーズケーキのお土産を持ってきてくれた。玄関の前で軽く話をして彼女は帰って行った。
マイケルは「好意がなければ普通は家までお土産を持ってきたりはしない」と言っていたが、慎重派の僕は単純に犬の絵のお返しかもしれないから早まってはいけないと考えた。前回、早まって新潟に誘った事の教訓から、慎重さが更に増していたのだろう。
しかし、犬の絵のプレゼントはそう何度も通用する手ではない。同じ犬の絵を毎日渡されたところで困るだけだろうし、よほどの変化のある絵でも描き続けなければ似たような絵になってしまうので、そのうち飽きてしまうだろうと思った。
次は何をプレゼントしようかと悩んでいた時に、貰ったチーズケーキからヒントを得たのだ!
食べ物なら毎日貰っても溜まって邪魔になる物でもないので迷惑にはならないだろう。以前、ハワイに住んでいた時にパン作りにハマっていた時期があったので、この機会にまたパン作りをはじめて、毎日彼女にプレゼントする事にした。
そうと決まれば材料を買いに行かなければいけない。
とりあえず感覚を取り戻すために単純なパンを作ろうと、強力粉とドライイーストを買ってきた。
パンは生き物である。イースト(酵母)という菌を使って発酵させる事でふっくら膨らませる事が出来るのだ。なのでその日の気温や湿度を感じとり、分量などの微調整をする「勘」が大事だと思う。毎回レシピ通りに同じ量の材料を混ぜ合わせれば同じ結果が得られるほど甘いものではないのだ。その日の生地をこねている時の粘り気などの感触で、粉や水、塩やイーストの量を調整し、発酵後の出来から焼く時の温度と時間もどのくらいが良いかを判断しなくてはいけない。
料理でも同じだが、僕はレシピは大体の流れを知る為だけに最初に一回だけ見て、その後は計りも何も使わず、全て目分量で作る。だから最初は確実に失敗する!
その失敗作第一号のバゲットを彼女のプレゼントとして自信満々に持って行った。そのパンはとにかく固くて僕としては失敗作だと思っていたのだが、好都合な事に彼女は固いパンが大好きだと言って喜んでくれた。
そういうわけで次の日も、またその次の日も固いパンを作った!
本当にこんな固いパンでいいのだろうか?
半信半疑ではあったが、毎日、「昨日も固くて美味しかったよ♪」と言ってくれるのできっと単純に固いパンが好きなのだろうと思って、自分用には柔らかいパンを作り、彼女用には別に固いパンを作ってプレゼントし続けた。
そんな毎日が続く中、これ以上とない進展のチャンスが訪れる!
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