電子書籍は本当に安くするべきなのか?

6/03/2010 Leo Rivas(リオ・リーバス) 2 Comments

iPadの登場によって電子書籍や電子雑誌の時代が本格的にやってきたと感じます。
AppStoreを見ていても、雑誌系などが次々とiPadアプリとしてリリースされる勢いはもの凄いですよね。これから更に勢いは加速すると思います。
しかし避けては通れない議論が一つあります。
AppStoreのレビューを見ていても(国を問わず)必ずと言って良いほど「価格」に対して「高い」という意見が目に入ります。

「物質的に無いものだから」、「ただのデータを配信するだけ」、「紙/印刷代が無いぶん安くするべき」、と言った消費者側の意見がかなり多い事に驚いています。
確かに消費者からすれば安ければ安いほど良いに決まっていますし、
高いと感じる物にたいして高いと言うのは悪い事でもありません。
しかし、何に対して高いと言うのかが問題だと思うのです。
その「内容」に価値がないから高いというのなら納得できます。
でもそれが物質じゃないから高いというのは少し違う気がするのです。
僕たちは本や雑誌を買う時、何にお金を払っているのでしょう?
「紙」に対してお金を払っているのか?印刷代に対してですか?
そんなふうに考えて本や雑誌を購入する人は少ないと思います。
その内容に興味があって、それを見たり読んだりしたいから、
つまりその「中身」、言わばコンテンツに対してお金を払ってきたわけですよね?
ならば媒体が紙から別のメディアに変わっただけで、中身がまったく同じであれば
その料金がさほど変わらなかった事に対して文句を言うのはおかしな話ではないでしょうか?
iPhoneだったらまだ分かります。小さいし読みにくいですから、同じ価値と考えるのは難しいでしょう。でもほとんど同じ大きさで読めるiPadなら、ほぼ同等の扱いでも良いと思えます。

むしろ考え方によっては、紙と違ってデータは半永久的に保存する事が可能です。
しかし紙の場合は相当良い環境で保存しない限り、劣化もしますし、場所もとります。
よっぽど大きなスペースが無い限り、買った雑誌を永久に家に置いておくのは難しい。
ただデータの場合はまず場所もとらず、(それを読めるデバイスさえ存在する限り)半永久的に持ち続ける事も可能なわけだから、むしろもっと価値のあるものとさえ考えられます。
写真のプリント(印刷されたもの)と元のデータ(ネガ)の違いのような感覚です。
写真が色あせてもネガの方さえ持っていればまた好きなだけ出力できる、といった感じです。

それと、これはコンテンツによって変わる事ですが、紙だとページ数の関係上、写真を小さくしたり文章を削ったりしなければならないような犠牲もありましたが、そういう部分で解放されるメリットも大きいでしょう。TIME MagazineやWired MagazineのiPad版などを見れば、そのへんがどう紙と違うかがハッキリ分かると思います。

僕は別に出版業界の人間でもなければ、出版業界を支えたいと考えている人間でもないですし、時代の変化によってモノの見方や価値観が変わってくるのも当然だと思いますが、どんなに時代が変わろうと、物の本質を見極める見方/考え方は失ってはいけないと思っています。

表面的な部分が激しく変化し続ける今の時代だからこそ、本質を見つめ直す良い機会なのかもしれません。最低でも「読み物」に関しては、電子書籍という新しいメディアの登場によって、今まで物質に隠れていた本質が少し見えやすくなるのではないかと思います。少なくとも僕は電子書籍に触れるようになって、そんな事を考えるようになりました。

2 件のコメント:

  1. 今はまだ出版社側も周りの出方や消費者の意見などを見ながら研究している段階でしょうね。僕も時間が経てば自然と適正価格というものに近付いていくと思います!

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